井の頭自然文化園の水生物館に入ると,ピッという鳴き声が遠くから聞こえた。数秒おきにピッ,ピッ,ピッと繰り返し聞こえてくる。
大水槽のところへ行ってみると,低木にヤマセミが止まっていた。めずらしい。いつもだったら,定位置である蛍光灯の上に止まっていて,ほぼ動かない。
低木に止まりながら,繰り返しピッ,ピッと鳴き続けている。鳴き方はカワセミに似ているが,声量は大きい。周囲をくるくると見回している。
しばらく鳴き続けると,おもむろにエサが入っているトレイに移動した。トレイには水が張ってあり,金魚が泳いでいる。この金魚がヤマセミのエサだ。
ヤマセミはくちばしを何度も水に突っ込んだ。金魚を捕るつもりがあるのか,それともただの気まぐれか。その仕草からは本気で捕まえるつもりがなく,くちばしを洗っているようにも見えた。
5度ほど突っ込む仕草を繰り返すと,そのくちばしには金魚が咥えられていた。
すぐにヤマセミは,蛍光灯の上へ移動する。1度だけ首を振り,金魚を叩きて弱らせると,器用に回転させて,ひとくちで飲み込んだ。
体勢を整えて,下の様子を伺っている。また,金魚を捕まえに行くのだろうか?
すると,大水槽の水に飛び込んだ。バシャっとひと浴びすると,また蛍光灯の上へ戻る。肛門をやたらヒクヒクさせているので,糞を飛ばすのかと期待して待ったが,結局なにも起きなかった。
鳴く間隔が,とても長くなった。腹が満たされて一息ついた雰囲気が,なんとなく伝わってきた。もう今日は動くことはないだろう。
幼稚園児たちが入ってきた。静けさに包まれていた館内は,急に明るく騒がしくなった。
また,井の頭公園で初めて野生のオシドリ雄を見かけた。
また,井の頭公園で初めて野生のオシドリ雄を見かけた。