著作との最初の出逢いは,30年以上前に遡る。とある遭難事故を,小学校の先生が話してくれた。事故を題材とした小説があることも知り,その話には現実とも創作ともいえぬ不思議な印象を持った。
中学生の頃。好きだったアイドルが大河ドラマに出演していた。その原作は,小説家が書いたものだった。ドラマを観ているうちに興味が湧き,書店で手にとった。それまで活字は苦手だったが,全巻読了してしまった。
高校生の頃。学校で配られた本もまた,小説家の著作だった。当時は内容に共感するどころか,なんとなく反感したものだが,今でも本棚に置いてある。
大人になってから。直木賞作品の中のひときわ個性的な題名に,思わず目が止まった。壮絶な仕事に挑む前の晩,主人公がみせた愛娘への想い。それをあらわす所作に,おもわず眼が熱くなった。
小説家は34年も前に他界しているが,自宅は今も残されている。偶然にも勤め先から10分ほど歩いたところだった。
僕は新田次郎が好きだ。